かわる(10)
げんすけ
2020/07/17 08:00
こじつけることが好きなヒトがいます。大好きなヒトもいます。ここにもいます。「こじつける」とは、どういう行為なのでしょう。いい語感はありませんね。今、辞書で意味を調べてみましたが、案の定、自分がこれまで何度も浴びてきた類の悪態もどきの言葉が書かれていました。
普通、批判や罵倒されたり罵声を浴びるとすぐにへこんでしまうたちなのですが、「こじつけ」「屁理屈」「牽強付会(けんきょうふかい)」といった類の言葉には、免疫・耐性ができているらしく、その種の文句を投げつけられても、さほど傷つくことはありません。やはり、好きなのです。逆に喜んでしまいます。
*ヒトはこじつける生き物である。
たった今書いたフレーズは、日ごろから感じていることを文字にしたものです。これまでの経験から、むっとなさる方が多いだろうと想像します。「こじつける」という言葉を「脱色=解毒=中和=中性化」できないでしょうか? たとえば、「こじつける」を「複数のものごとに関係性を見いだす」なんて言い換えてみてはどうでしょう。少しは響きがよくなりましたか?
「複数のものごとに関係性を見いだす」と書いたとたん、思わず笑ってしまいました。「こじつける」の強引さと、図々しさと、ちょっと恥ずかしいという気持ちが薄れて、迫力がなくなったというか、間が抜けた感じがするのです。どう言えば、わかっていただけるでしょうか。そうだ。普段は正装などしないのに、おめかしをして、やたら気どった表情をして鏡の前に立った時の気分に似ています。とってつけたようで、似合わないのです。やはり、「こじつける」でいきます。
*
広い意味で言葉を考えてみましょう。話し言葉、書き言葉、表情や仕草や身ぶり手ぶりを含む身体言語=ボディランゲージ、手話、ホームサイン(※家庭だけで通じる断片的な手話)、さまざまな標識や記号などをいっしょくたにして、「言葉」と、ここでは呼ぶことにします。自分とは違う言語を話すヒト、いわゆる言葉の通じないヒトに、「かわる・かえる」と「わかる・わける」という言葉=動作を、ボディランゲージを用いて伝えてみよう。そんなお遊びというか実験をやってみませんかと、このブログの記事「かわる(7)」で、みなさんに呼びかけました。
伝えるのは別の言葉や動作でもよかったのですが、
*「かわる・かえる」と「わかる・わける」の持つ、言葉の根源的な動態=有り様(※あくまでも個人的な意見で、単なる思い込みかもしれません)を頭(=想像力)と体全体(=体力)を使って演じてみることが、言葉の仕組みと働きを考えるうえで、助けになるに違いない。
と思ったからでした。さて、そんなややこしいことは抜きにして、たとえば、ペン、パソコン、ケータイ、消しゴムといった身の回りのものや、朝ご飯を食べる、歯医者へ行く、風邪を引く、乗るつもりだった列車に遅れる、といった日常的な動作や状況を、身ぶり手ぶり表情などを用いて、誰かに伝えるつもりになって演じてみる。そんなお遊びをしてみませんか? きっと、「こじつける」という、ちょっとワルな響きのある言葉を体感できると思います。
具体的には、
*我流の「ジェスチャー=身振り・手振り=ボディランゲージ」
が考えられます。あるいは、
*手話
という言語(※念のため、駄目押しに強調させていただきますが、たとえば日本語や英語と同じく、手話は言語です)を学ぶことも視野に入れてよいのではないかと思います。
*
ここで、話を飛躍させます。上で述べたような「広義の言葉」を使う(※既にあるもの=手本を使う)、あるいは、作る(=自分が表現したいものごとを表現する手本がなかったり、伝えたいものごとを伝える手本がない場合には、工夫して自前で作るしかありません)さいには、その前提に「こじつける・こじつけ」があるのではないでしょうか。
考えてもみてください。Aというものがあれば、それを相手に見せれば、それで済みます。でも、Aが手元や近くにないために、A以外のものでAを表すのです。これって、こじつけではないでしょうか。それこそ、こじつけだという言葉が返ってきそうですが、さきほど書きましたように、幸いにして免疫・耐性があるみたいで、めげたりへこんだりしません。というわけで、さらに性懲りもなく、いけしゃあしゃあと、こじつけをさせていただきます。
*言葉とは、Aの代わりにAでないものを用いるこじつけである。言葉というこじつけが、ヒトをヒトとならしめている。
そうこじつけてもいいのではないでしょうか。つまり、こじつけをこじつけているわけです。「こじつける・こじつけ」という言葉が、どうしても気に入らない。人間様である自分のプライドが許さない。そんなふうに思われる方のために、解毒済みバージョンを用意しました。
*言語の使用とは、Aの代わりにAでないものを用いるという、人類の英知から生じた崇高ないとなみである。言語を使用するという行為が、人間を人間ならしめている。
いかがなものでしょうか。言い「かえて」みました。お「わかり」いただけたでしょうか。
*
以上をもちまして、「かわる」(1)~(10)の締めくくりと致したいと思います。お読みいただき、どうもありがとうございました。
※この文章は、かつてのブログ記事に加筆したものです。https://puboo.jp/users/renhoshino77
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