かわる(1)
げんすけ
2020/06/27 15:52
かわる。
こうやってひらがなでぽつりと書いてみると、漠然として、とりとめのない感じがするのは、日本語が大和言葉系の言葉と漢語系の言葉から成り立っているからだと思われます。変わる。代わる。換わる。替わる。漢字に置き換えてみると、ひらがなだけの「かわる」が、いろいろな意味やイメージを担っているさまが浮き彫りになります。辞書で「かわる」を引いて、いくつかに分かれた意味の項目と定義と、それに当てる漢字との関係を見ていると、不思議な思いに駆られます。
もともと日本語には文字がなかったという説が有力です。だから、中国語の文字である漢字を変形して、ひらがなとカタカナを作ったそうです。かつてはどう発音され、どういう活用をしていたかは知りませんが、「かわる」や「かえる」に相当する言葉が、前後関係だけを頼りにコミュニケーションの道具として使われていた時代、つまり文字のなかった時代を想像してみましょう。
そう言われても、これまた漠然として、とりとめのない感じがしますね。想像しようにも、とっかかりになるものがありません。では、発想の転換をしましょう。文字が存在しなかった昔のことなどを考えようとするから、話がややこしくなるのですよね。やめましょう。よく考えてみると、日常生活の会話でのレベルならば、「かわる」と「かえる」の使用法については、現在でも状況はそれほど変わらないのではないでしょうか。
「ねえ、そろそろカーテンを新しいのにかえようよ」、「あっ、もうすぐ信号が赤にかわるよ」、「ほんとう? また、あの人、仕事がかわったの?」、「このお味噌汁、おかわりしてもいい?」、「この会社では、専務にとってかわる、これぞという人物がいないことが最大の問題だ」、「最近の○○ちゃん、ここに初めて来た時とくらべると、ずいぶんかわったね」、「じゃあ、そのかわりにあなたがお風呂掃除をしてね」、「かわりばんこに運転しながら、大阪まで行ったの」、「きょうは、わたしがお母さんにかわって夕ご飯をつくります」、「君のおじいちゃんって、かなりかわった人だよね」
このように、しゃべっている分には不自由はしないと思われます。
ところが、以上の例文での「かわる」と「かえる」に漢字を当てようとすると、自信を持って漢字をまじえた文に変換できるものもあれば、かなり迷うものもあるのではないでしょうか。変、代、換、替のうちのどれを当てるのか? パソコンのワープロソフトには、当然のことながら変換機能がついています。変換に迷った時に助けとなるような、簡潔な説明や例が示してあるので役立ちます。それでも、迷うことがあります。そんな時には、辞書を引きますが、それで解決することもあれば、とりあえず、最も適切と思われる漢字を当てたり、自信がないのでひらがなのままで書くこともあると思います。
漢字の読み書きのテストを除けば、いざとなったらひらがなで書けばいい。こう思うと楽ですね。これが日本語の有り難い点でもあるのです。
※この文章は、かつてのブログ記事に加筆したものです。https://puboo.jp/users/renhoshino77
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