かわる(4)
げんすけ
2020/06/29 12:46
言葉遣いが「正しい」か「正しくない」かを、送り仮名の付け方に絞って考えてみましょう。簡単に言えば、たとえば「わかる」にどんな漢字を当て、ひらがなとの配分をどうするかです。手元にある複数の辞書と新聞社系の用字用語集を参考にして、以下にまとめてみます。
*「わかる」=「分かる」=「別る」=「解る」=「判る」
このように、「わかる」を表記することが「可能」であり、「標準的には」「分かる」と表記するように「なっている」ようです。「なっている」を「勧めている」と理解する人もいるでしょうし、「決められている」と受けとめる人もいるでしょうし、「強制されている」と感じる人もいるでしょう。
いずれにせよ、「分かる」と表記するのが「正しい」と考えているのに近いスタンスだと思います。みなさんの中に「『分かる』だけを使うなんて、もったいないなあ」と感じる方は、いらっしゃいませんか? 次の表みたいなものをご覧ください。
*「分」 ⇒ わける、バラバラにする、わきまえる、おのれを知る、わけて配る、デリバリー、というイメージ。
「分別(=ふんべつ)」「分解」「分離」「分裂」「野分(=のわけ)」「分水嶺」「分析」「微分」「通分」「分類」「分家」「部分」「五分五分」「春分」「秋分」「身分」「分際」「区分」「分割」「分配」「分譲」「分担」……
*「別」 ⇒ わかれる、バイバイ、さよなら、ちょっぴりさみしい、離れる、他とは違う、ゴーイング・マイウェイ、ああ何と薄情な、わける、というイメージ。
「別離」「死別」「別居」「送別」「餞別」「特別」「格別」「別格」「区別」「分別(=ぶんべつ)」「判別」「大別」「差別」「千差万別」「識別」「鑑別」「別荘」「別個」「別記」「個別」……
*「解」 ⇒ とく、バラバラ、わける、帯なんかをほどく、よかったね、ゆるゆる、自由にしてやる、バイバイ、余計なものを取り除く、脱がしちゃう、説明する、謎をとく、なっとく、わかる、どれどれ見せてごらん、なるほど、やっぱり、そうだったのか、というイメージ。
「解体」「分解」「解剖」「和解」「溶解」「融解」「解放」「解禁」「解散」「解雇」「解毒」「解熱」「解消」「解除」「解決」「理解」「誤解」「難解」「不可解」「氷解」「解明」「読解」「明解」「詳解」「図解」「解釈」「見解」「解説」「解析」「解答」……
*「判」 ⇒ わかる、ガッテン、なるほど、われる、明らかになる、白黒をつける、暴露される、さばく、けちをつける、ポンと押す、印をつける、というイメージ。
「判断」「判別」「判定」「判明」「判読」「判決」「裁判」「判事」「公判」「審判」「判例」「批判」「談判」「評判」「判子」「血判」……
以上は、複数の漢和辞典などをもとにして、「わかる」に当てはめることが「可能な」各漢字のイメージを調べて分類してみたものです。何ぶんにも素人のやっつけ仕事であることを、ご承知おき願います。また、こうした分類は漢和辞典によっても、微妙に異なることも付け加えておきます。「とりあえず」、こんなふうにも「わけられる」、あるいは、このブログを書いている者の「個人の感想」くらいに受け止めてください。
「いやに、ごちゃごちゃしているなあ。すっきりいこうよ。『わかる』は『分かる』でわかるじゃないの。これで決まり」
といったふうにお「感じ」になりましたか? それとも、
「これで『わかる』の意味が整理できたような気がするけど、『分かる』だけじゃなくて、場合によっては『別る』や『解る』や『判る』もあっていいかな」
とお思いになりましたか? 個人的には、「わかる」に当てる漢字として「分」だけを採用して、「別」「解」「判」を捨てるなんて「もったいないなあ」という気持ちが強いです。あなたは、どうお「感じ」になりますか?
※この文章は、かつてのブログ記事に加筆したものです。https://puboo.jp/users/renhoshino77
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