かわる(7)
げんすけ
2020/07/11 08:19
AとBという二つの言葉=語のグループがあったとします。グループと書いたのは、二つの言葉=語を辞書で引いてみるとわかるように、複数の意味がある場合が多いからです。日本語では、特に大和言葉系の語の意味が厚い、つまり多層的=多義的である傾向がみられますね。さて、AとBが別々の言葉=単語として扱われているとします。
辞書でも別の項目として記載されているし、普段使いながらも意味は別の言葉だとたいていの人が思っているとします。ところが、このAとBの「意味=辞書の定義」や、それぞれの言葉の使用例をみてみると、深い関連性があるような気持ちになってくる。大きな辞書で語源を調べてみたけれど、どうやらつながりはなさそうだ。でも、似ているというか、何かつながっている気がしてならない。今回は、そうした話をテーマにしてみます。
*
「かわる」と「わかる」という二つの言葉のイメージ=意味=使われ方を調べて、いかにもアマチュアらしい簡単なリスト=見取り図をつくってみて、上で述べたAとBという言葉のような印象を抱きました。実は、以前から、そんな気がしたのですが、わざわざ二種類のリストを作って見比べるまではしませんでした。
で、いざ、試してみたところ、共通点というより、何か関連性があるように思えるのです。このブログの過去の記事(「かわる(4)」と「かわる(5)」に載っている、「わかる・わける」と「かわる・かえる」の見取り図もどきを参照していただくと、これから書くことの意味をとる助けになるかと思います。
二つの言葉のグループから、キーワードを取り出して並べてみます。それぞれの言葉のリストには、見出しが付いています。
(a)(表象・認識・知覚)「代理」-「交換」-「理解」-「判断」
(b)(学問)「代理」-「変換」-「理解」-「誤解」-「解釈」-「分析」-「分類」-「識別」-「判断」-「判明」-「解明」
(c)(経済)「交換」-「変動」-「代金」-「為替」-「換金」-「兌換」-「換算」-「判子」
(d)(社会・生活)「代理」-「分類」-「区別」-「差別」-「解明」-「理解」
(e)(政治・立法・行政)「代理」-「代行」-「代表」-「代議士」-「代議制」-「変化」-「変革」-「変節」-「変心」-「判子」-「変身」-「政変」-「事変」
(f)(司法)「代理」-「代行」-「解明」-「理解」-「解釈」-「分類」-「区別」-「代表」-「判事」-「裁判」-「判決」-「審判」
とりあえず、六種類のリストを作ってみました。六種類の見出しと関係のある言葉を取り出したものです。以上のリストから、次のようなことが言えるように思います。
*「かわる・かえる」と「わかる・わける」は深く結びついているらしい。その結びつきは、「かわる・かえる」と「わかる・わける」という動作=運動=身ぶりが、シンクロ=連動し合っていることから生じているらしい。
*
ところで、二つ以上のものの間に共通点や関係性を見出し、それに理屈をつけたり、規則性を当てはめることを、「こじつけ」と言います。
*「こじつけ」
がポジティブに受けとめられると、
*「法則」とか「理論」とか「説」
という栄誉ある言葉を与えられることがあります。ネガティブに受けとめられると
*「でたらめ」とか「でまかせ」とか「めちゃくちゃ」とか「ばーか」など
の罵声が浴びせられるか、単に無視されます。
それはそれでいいとして、みなさんに考えていただきたいことがあります。
「かわる」および「かえる」と、「わかる」および「わける」という二種類、数え方によれば四種類の「動作=運動=身ぶり」に「共通性 or 関係性」があるでしょうか?
それを知るためには、想像力が必要になります。というわけで、あくまでも、「 kawaru 」「 kaeru 」「 wakaru 」「 wakeru 」という音声として、それぞれの「動作=運動=身ぶり」をイメージしてみてみましょう。
とりあえず、上の(a)から(f)の六種類のリストは、いったん忘れちゃってください。シンプルに、「かわる」「かえる」「わかる」「わける」をそれぞれイメージしてみてください。頭だけで考えていると難しいですよね。では、体を使って表現してみましょう。
*
自己流にジェスチャーやパントマイムをしてみるのです。つまり、自分の母語が通じない他言語の話し手に、四つの言葉=語の意味を説明する、あるいは伝えるために、身ぶり手ぶり、場合によっては表情や顔芸を用いてみるシミュレーションを実行してみましょう。一瞬の動作である必要はありません。物語性があって時間がかかる動作でも、一向に構いません。
また、「おーっ」とか「はっ」くらいなら、声を出してもいいことにしましょう。物は試しと言います。実際に、ひとりでこっそりと試してみませんか。他人様(ひとさま)に提案しておいて、自分は何もしないのは失礼ですので、こちらでも、その作業をしばらく実行してみます。本当は、こちらの動作を見て受けとめてくれる相手がいるとベストなのですが……。
蛇足とは思いますが、このブログではいったい何をやっているのだとお思いの方のために、ここでお断りしておきます。本気です。正気とは申しませんが、本気です。念のため。
※この文章は、かつてのブログ記事に加筆したものです。https://puboo.jp/users/renhoshino77
#エッセイ
#日本語