うつせみのたわごと -10-

星野廉

2020/09/24 09:09


 げん――。きになることば。からからきた、ことば。このしまじまの、にしどなりにある、りくのはしと、そのむこうにあるおおきなりく。そこより、ずっとはるかかなたにある、りく。さまざまなことばがあるなかで、Gen(※ドイツ語)とつづり、げんとよむことのはがある。もっとも、げーんと、のばして、くちにするのが、ただしいらしい。いのちのもとのこと。


     *


 いきものをこまかく、さらにこまかく、わかていくと、げんとよばれるつぶがあるという。いきものを、きにたとえてみよう。みきがあり、おおきなえだがあり、ちいさなえだへとわかれていく。そのみきにも、えだにも、えだのさきにも、はっぱにも、はなにも、みにも、ちいさなつぶがやどる。つちのなかで、はっている、おおきなねにも、ちいなさなねにも、こまかなつぶがやどる。それぞれのつぶたちは、ほぼおなじ、げんからなりたっている。そんな、はなし。


     *


 げん・Gen。げんかい・Gen界。そこでは、わかれる、ふえる、うつす、つたわる、わたす、うむ、うまれる、でる、あらわれる、わく、がおこる。しくみは、うつすにあるという。うつしをつくる。そっくりをつくる。うつしまちがうことも、あるらしい。そんな、はなし。


     *


 げんは、いのちのもと。ちいさなちいさな、めにみえないほどの、かすかなつぶをおもいうかべてみよう。まぼろし、ことのは、うつつ、ふち、みなもと。そして、もと。幻界、言界、現界、限界、原界、そしてGen界。そのあわいはあわい。どれもが、ひとがつくった、ものがたり。ひとがおもいえがいた、こと、もの、さま。そとにありながら、うちにある。それがおもい。かたり。ことのはをもちいた、はなし。おそらく、ひとにしか、つうじない、はなし。ねこには、つうじそうもない。かといって、ひとがえらいわけではないのは、いうまでもない。ひとは、わけるだけ。そんだけ。


     *


 ひとはわける。わけてわかったと、おもいこむ。これが、ひとのくせ。くせもの。いのちさえも、ことこまかにわけ、わかりはじめたと、おもいこんでいる。いのちのつぶを、かぞえ、ときほぐし、よむ。いつか、すべてがわかると、しんじている。いのちさえも。ことさえも。ものさえも。さまさえも。このほしさえも。このほしの、そとさえも。


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 わけるのは、ひとがちいさいからに、ほかならない。ちいさいから、わける。おおきなものは、みえない。おのれがちいさいから、みえないだけ。おのれがちいさいから、わけるだけ。それだけなのに、おもいちがいをしている。これを、かしこいとみるか、おろかとみるか。ひとそれぞれ。つねに、おごりたかぶるものもいれば、おそれつつしみ、かしこまるたちのものもいる。ひとそれぞれ。ひとのたちは、ときによる。ときとともに、かわることもある。おおむね、おろかで、おごりたかぶる。それが、ひと。くせ。たち。すじ。そうしたものまで、げんがきめるのだという。そんな、はなしもある。


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 ちいさくしてみて、みえたとおもいこむ。おのれがおおきいとおもえば、ちいさなものを、あなどることができる。みくびることができる。みくだす。みきわめたと、おもいこむ。そのくせ、おおくのひとは、いまだに、かみをしんじるという。にまいじた。うそつき。あしき、くせ。こころのうちでは、このほしをおさめる、おおかみだとおもっているくせに。おもいと、おこないが、おおきくずれている。くせもの。


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 いのちのつぶのものがたりに、みみをかたむけてみよう。あくまでも、かたりだということを、わすれないようにして。きくところによると、いのちのつぶは、ながいながいおびを、ねじったごときかたちをしているとか。そのしくみのかなめは、うつす、うつる、ふえる、つたえる、らしい。ない、から、ある、はうまれない。とどのつまりは、あるものを、うつすのが、うむ、うまれる、ということか。おや、つまり、ちちははから、こどもへと、うつしたものが、つたわる、ということか。ややこしい。わずらわしい。


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 すなおに、なるほどうんうんとうなずけない、へそまがり、つむじまがり。このたわごとをつづる、あほも、そのひとり。おつむがまがっているから、いたしかたなし。かたなし。よくできたはなしだと、よくできたものがたりだと、にがわらいするのが、せいぜい。とはいえ、いのちのすじの、しくみをときほぐすわざ、などといわれれば、かしこまってしまう。やまいをなおし、ゆたかなみのりを、てにするすべ、などといわれれば、おそれいってしまう。ねじれにねじれたしくみを、ほぐしまくる。どんなに、ときほぐしたところで、ほぐしきれるたぐいのはなしとは、おもえないのだが。ひと、それぞれ。


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 なおしたい。なおりたい。ながくいかせたい。ながくいきたい。もっとふやしたい。もっとふえたい。もっとさかえたい。そのためだけではないが、さかりたい。ひとには、つねにさかるという、めずらしいくせがある。ほかのいきものにはみられない、すじがある。このほしには、もううけいれないほどのかずの、ひとがいる。それなのに、まだふえつづけている。よいわるいのはなしではない。おそらく。


     *


 ふえる。ふやしたい。もっと、もちたい。もっと、ゆたかになりたい。さきに、ゆたかになったものたちのあとをおう、あらたにさかえつつあるくにぐに、ひとたちがいる。それにしても、ひとはふえすぎた。このほしにあるものが、すべてのひとたちに、ゆきとどかない。まずしきものと、とめるものとのさが、ひらきすぎた。このほしにあるくにぐにから、ひとがあつまり、はなしあう。はなしあいは、まとまらない。だれもが、おのれとおのれのなかまや、はらからが、かわいい。いとおしい。こたえはでない。


     *


 まぼろしがふえる、ことのはもふえる、うつつもふえる、さかいめもふえる、みなもともふえる。そして、ふえるのつぶのときがきた、という。幻界、言界、現界、限界、原界、そして、Gen界。どれもが、にている。ほぼおなじ。ふえる、ます、うむ、でる、わく。そうした、うごきとゆらぎが、あるのみ。おおいなる、うごきのくさり。おおいなる、ゆらぎのわ。


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 ひとは、かわす。ものとものをかわすが、はじまりだったとか。いまでは、もの、ひと、はたらきを、かわす。えっ、このみ。とっ、れいど。まー、けつと。からことばなり。ひとのよは、かわすにみちている。かわすのもとにあるのは、おもみ、ねうち、あたい。おもみ、しますか。ねぇ、うち、きらいなの。あたい、きらいなの。それでは、すまない。


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 おもみは、おもうからきたというはなしがある。と、じびきは、いう。おもい、おもみ。どう、つながるのか。また、おも、つまり、つらからきたという、はなしもある。つらは、かわ。ねこのまなこのごとくかわる、かりそめのかおのさま、いいかえれば、かわり。ばけること。かおにつける、おもてがた。からことばで、ますくというとか。かの、つたんかめんの、ですますくの、ますくとおなじです。いずれにせよ、なにかのかわりになにかでないものをもちいる、につうじる。かわりのしくみに、にている。おもい、おもみ。おもしろし。これが、でまかせとすれば、おどろくべき、でたらめ。おどろくべき、であい。おどろくべき、たまたま。おそるべし。


     *


 すべては、かわりが、かわりのさししめすものの、かわりであることから、くる。なにかと、そのかわりとのあいだには、なんのかかわりもない。きまぐれ。なにかがありそうにみえるとしたら、まぐれ。きまま。ままならぬ。おもみ、あたい、ねうちも、おなじ。ままならぬ。ひとは、もてあそばれるだけ。


     *


 かわすと、ふやすは、ちかい。ちかくみえる、というべきか。からみあっている、ともいえそう。ふやしたい。もっともっと、ふやしたい。あれがほしい。これがほしい。そのためには、おもみのかわり、つまり、かねがいる。かね。まね。まに。まねまねまね、まね。まねすんな。まにまに、まに。まにうけるな。かわりゆえに、まにうけるなといわれても、かねはほしい。とみを、えたい。だれしも、そうおもう。このあほも、そうおもう。おもみはおもい。かねなしでは、くえない。うえじにするだけ。ねこにも、くわせられない。



     *


 もの、ひと、はたらきのあたい。おもみ。おもみは、ひとのおもいにある。おもいはかわる。めまぐるしく、かわる。ひとのよには、おびただしいかずの、いちばがある。というか、つくられた。できちゃったものは、しかたがない。かねのおもみ。とみのおもみ。なにかのかわりのもののおもみ。そのおもみとながれが、くるう。もとのしくみが、きまぐれで、きままだから、いたしかたなし。いま、はじまったことではない。


     *


 くるいは、ひとが、かわしはじめたときに、はじまった。ふえるはずが、へる。へるはずが、ふえる。ふえるふえるが、へるへる。ごーつーへる。おーまいがっ。からことばの、ののしりなり。ふえるとへるの、あわいが、ますますあわくなってきたかのごとくみえる。そう、みえるだけ。みえるのは、ひとだけ。かわり、にせもの、おもてがたが、みだれまう。ひとがつくったものが、ひとのてからはなれて、まい、さまよう。とばっちりは、ほかのいきものにも、およぶ。あなどれない。


     *


 おもみは、あわい。おもみは、はかない。おもみは、あてにならない。なぜなら、おもみはおもいだから。おもいえがくことしか、できないものだから。えにかいたもち、だから。それも、よってたかって、みんながかってに、ふでをだして、かきかえるもちだから。ほしい。もっとほしい。ふやしたい。もっとふやしたい。おもみのしくみにとりつかれた、ひと。いまでは、そのしくみが、ひとのいとなみすべての、もとにある。そのしくみにもてあそばれて、ひとはうごいている。ひとがつくった、ありとあらゆる、もの、こと、さま、はたらきを、うごかしている。ああ、なんたるおもいちがい。もとにもどせない、おおちょんぼ。


     *


 ふえるはず。おおきくなるはず。そういうしくみだったはずなのに、そうはなっていない。そんなしくみをつくってしまった。これもまた、しっぽのないさるからひとになったときの、あたまのなかでおこったという、ずれのせいなのか。へだたったものをちかくにみせる、しくみ。なにかのかわりになにかでないものをもちいる、かわりのしくみ。ふえるはずのものがふえたりへったりする、おもみのしくみ。これらは、ひとがつくったというより、なぜか、てにしてしまった、みにそなわってしまった、とかんがえるべきなのか。もしも、そうであれば、ひくにひかれず、もとにはもどれない。ひとのくせ。さが。さかなに、おかをあるけと、いうのとおなじ。どうしようもない。


     *


 いま、おおごとなのが、かわり、にせもの、おもてがたの、おおぐるい。だれかが、なにかに、しくんだらしい。どくまんじゅう。さぶ、ぷらい、む。からことばなり。おかわりをかえせないものに、おかわりをかした。もとは、そんだけー。どくまんじゅう。どくはまわる。ひとのよを、まわる。うつる。つたわる。かけめぐる。きえそうな、きざしもない。おもみがおもいのうちにあるのなら、きえるとしんじ、ねんじれば、いいのか。どうも、そうはいかないらしい。


     *


 おもみとかねをめぐる、こざかしげなものがたりの、かたりても、かたなし。おもみとかねについて、うまくのべるものにあたえられる、のべるなんとかいう、かねでできたまるいいたと、それにそえられたおおがねをもらったものたちも、このどくまんじゅうには、てをやいているらしい。それにしても、のべるなんとかを、そういうひとたちにさずけるとは、うさんくさい、はなしではないか。こうなってしまえば、のべてもしかたなし。のべる、しようがない。のべるしょうなんて、いらない。なに? ひと、それぞれ? えっ、このみ? くすっつ。おもわず、わらう。しょうもない、しゃれ。しゃれこうべ。いずれにせよ、このみで、がせに、かねなんかやるな。みんなのいのちが、かかっているんだ。せきにんしゃ、でてこい。ひとりで、ぼやき、まんざい。じんせいこうろ。


     *


 ふやす。うつす。そっくりをつくる。ものがほしいときには、かみのかねをする。するとは、そっくりなうつしをつくることなり。すってすってすりまくり、どくまんじゅうたいじ。こうかなし。どくが、ほかのものに、うつってしまったらしい。ばくちで、すったのとおなじ。すったもんだ。


     *


 かたや、いのちがほしいときには、Genというつぶのうつしをつくる。からだから、きりはなし、かみをきどった、ひとのてでつくる。うつし、うつし、うつしまくる。そのさまは、うつくしくない。おそれをしらぬしわざ。あさましい。ゆくすえが、どうなるかは、まだわからない。おそろしいやまいの、うつしごっこに、ならないことを、いのるのみ。


     *


 かねとGen。いずれも、おかわりであり、うつしである。それが、ともに、ふえる。はんぱじゃなく、ふえる。それがGen界。おかわりのおかわりのおかわり――。うつしのうつしのうつし――。やっぱり、にている。にすぎ。げきに。こくじ。おかわりのうつし。うつしのおかわり。そんなんが、どんどんふえていく、ひとのよ、そして、このほし。あやし。こわし。あやうし。


     *


 Gen。ふえる。うまれる。いかがわしいかたりは、もういらない。おもみのしくみも、もういらない。なにしろ、たくらんたはずが、たくらみどおりに、ことがはこばない、ときている。あやまったに、ちがいない。つくりそこねたに、ちがいない。なにかとなにかをかわす。なにかをあたえて、かわりに、なにかをもらう。そんだけーが、そんだけーでは、すんでいないらしい。このあやしいうごきは、なにかににている。なにかのかわりである、ことのはの、あやしいうごきに、よくにている。かぎは、やっぱり、かわるにあるのではなかろうか。かわりにあるのではなかろうか。かわるはわかる。ひとは、そうしんじているみたいだが、わかっていないのがまことらしい。


     *


 ひとは、うむ、うまれる、ふやす、ふえる、のなぞをといたと、おもいちがいをしているのでは、なかろうか。かわるがわかっていないのとおなじく、ふやすもうむも、わかっていないのでは、なかろうか。Genをめぐるかたりには、しろうとのめからみても、あぶなっかしいところがある。とりわけ、こわいのが、Genを、ひとのかってにあわせて、くみかえるというはなし。たくらみが、うらめにでないと、だれがいいきれよう。ひとつまちがえば、このほしのいのちがあやうい。すべてのいきものどうしばかりか、いきていないものたちのあわいの、つりあいがくるいかねない。たとえば、だしぬけにくさきがかれ、おおくのいきものがやまいにたおれ、ひいては、なつにおおゆきがふり、ふゆにむしのむれがたはたをおそいかねない。また、ひとのからだとこころにくるいがおこらないと、だれがいいきれるのか。


     *


 かねとおもみをふやす、かわすいちばのしくみは、あきらかに、おおちょんぼ。これ、もはや、ばればれのはなしではないか。そうやって、かわるがわる、あらわれる、かたりのかずかず。ふえるのは、そんなかたりだけか。いかにも、ずれたひとのやることらしい。せめて、ほかのいきものたちや、このほしまで、ずらさないでほしい。


     *


 このほしにくらすいきものは、かわすことでいきている。ふえている。きえることもある。おおきくなる。ちいさくなることもある。ひとは、そのしくみをとくかぎとして、Gen というはなしをつくり、かたっている。かたりつくしたわけではない。それはさておき、ひとは、かわすことをおぼえた。なにかのかわりをかわすことをおぼえた。おもみをかわすことをおぼえた、ともいうべきなのかもしれない。そのうらには、ふやしたい、もっとほしい、さらにおおきくしたいという、おもいおもいがあるとおもえる。


     *


 ひとは、かわすというしくみを、みにつけた。おそらく、しらずしらずにみにつけた。わけもわからず、みにつけた。いまだに、そのしくみをしらずにいる。なんども、そのしくみの、とちくるいにであいながら、またもや、くるいのなかにいる。いま、おそっている、とちくるいはおおきい。ふやせふやせ、おおきくしろおおきくしろという、かけごえのなかで、おおきくなったのは、くるいとずれだけ。あたまのなかに、ずれがおきてから、くるいつづけているひとが、またくるい、ずれた。これ、とちくるった、はずれものの、あほのたわごとなり。いうまでもなく、しんじるにあたいせず。


     *


 それにしても、おもみ、つまり、あたいをかわすと、ふやすとは、もともと、はなしがちがうはず。おもみをかわすに、まとをしぼろう。おもみをかわすしくみは、おそらく、ひとのおもいや、おもわくでは、はかれないほどのおもみを、そなえているのではないだろうか。いいかえると、ひとには、にがおもすぎる。おもうにも、おもいにも、おもみをおもうには、にがおもすぎる。だから、はかれない。わからない。なにかのかわりになにかでないものをもちいるという、かわりのしくみは、ひとにわからないようにできている。それとおなじく、おもみのしくみは、ひとには、はかれないようにできているのではないか。


     *


 てみじかにいうなら、おもいにおもいはわからない、となる。だめおしに、からことばのたすけをかりてみよう。思い、想い、念い、憶い、重い、面い、主い、母いは、図れない、計れない、測れない、量れない、別れない、謀れない、諮れない。とにかく、にはおもい。ひとには、おもすぎる。はかれない。だから、くるう、ずれるしかない。


     *


 Gen界、すなわち、ふえるをめぐってつづることのはたちが、こんなにふえるとはおもいもしなかった。つづるかきもののなかみを、つづることのはがまねて、ふえたのにちがいない。ことばは、かしこい。おそれいる。とにもかくにも、こんなにも、ながくなった、たわごと。もうしわけなし。



【追記 上記の戯言につづられていることばたちに身をまかせてください。どのようにも取れると思います。意味や解などありません。というか、無数にあるでしょう。そうやって、たわむれてみませんか。参考としての、ことわりをお望みの方は、グーグルで、 "うつせみのくら" "遺伝子" 、 "うつせみのくら" "貨幣" 、"うつせみのくら" "何かの代わりに" 、 "うつせみのくら" "かわる" "わかる"、 "うつせみのくら" "交換" 、"うつせみのくら" "ケインズ" "投資" という具合にダブルとトリプルのキーワードで、6回検索してみてください。


 そのさいには、"○○" と括弧でくくるのをお忘れならないように、ご留意願います。今、挙げた6組のキーワードを、それぞれそのままコピーペーストして検索なさるのが、てっとり早いかもしれません。ヒットするのは、長い文章が多いと思います。関係ありそうなところだけ、拾い読みしていただくだけで十分です。こんな戯事にお付き合いくださる方がいらっしゃれば、うれしいです。】


【注: 現在は「うつせみのくら」という過去のブログ記事を再録したサイトがないので、上記の検索は意味をなしません。お詫び申し上げます。】


【後記 きょうのお話は、ややこしいため、長くなってしまいました。ひらがなばかりの続く文章で、さぞかし読みにくかったと思います。また、硬いテーマなので、随所に駄洒落をちりばめましたが、かえって、うざかったでしょうか。ごめんなさい。限界についてつづった「うつせみのたわごと -8-」で述べたように、こうした書き方を選んでいるのは、いわば企み=試み=実験=戦略=賭けなのです。母語という枠の中で「外国語」(※括弧つきです)で語る=騙る、そして通常の書き方では書けない、読めない、見えない、思考できないことに触れようという、まことに独りよがりで、とちくるった企てなのです。


 自分には、あえてこういう書き方をしないと書けないことがあるように思えてなりません。ですので、書かれている内容よりも、書かれている言葉たちの身ぶりと表情に目を向けてくだされば、うれしいです。ここまで、辛抱強くお付き合いくださった方に、こころより感謝いたします。】


     ■


【解説】「こんなことを書きました(その20)」より

*「うつせみのたわごと -10-」2010-02-11 : 長い記事になってしまいました。テーマは、「ふえる・げん・Gen(※ドイツ語で「遺伝子」)」という言葉とイメージをもとに世界をとらえる「Gen界」です。小さな命の単位が転写という仕組みでどんどん増えていく。転写しそこなう場合もある。死滅する単位もある。単位の集合体である生体は、単位を生殖や増殖という仕組みで、新たな生体を生み出していく。そうやって、写す、移る、増える、伝わる、渡す、という一連の動きが生起する。ヒトは、その生起を出来事としてではなく、物語としてとらえるしかない。その物語を生成するために必要なのは、分けるという作業だ。分けるのは、ヒトが小さいからにほかならない。自分より小さく分けて分かったとする。Gen界における、もうひとつの運動は、「交わす」ことである。「ものを交わす」から、「価値を交わす」へとヒトは「交わす」を変化させた。価値という分からないものに、ヒトはもてあそばれ、振り回されている。それが経済である。「増える・増やす」「交わす」の根底には、ヒトの欲望、とりわけ物欲がある。決して逃れることができない、根源的な欲がある。以上のような話です。なお、「後記」の中で「母語という枠の中で『外国語』で語る=騙る」と「書き方によって書けることと書けないことがある」という意味のことを述べています。このシリーズの基本的なスタンスを言葉にしたものです。標準的な表記に直したキーワードは、「おもい・思い・想い・重い」「重み」「値」「値打ち」「かね・金」「はかる・量る・測る・計る・諮る・謀る」「サブプライム」「いちば・市場」です。直接書かなかったキーワードは、「ゲノム解読」「遺伝子工学」「遺伝子組み換え」「バイオテクノロジー」「クローン」「ES細胞=胚性幹細胞研究」「ノーベル経済学賞」「金融工学」「CDO」「大不況」「資本主義」「市場経済」「造幣」「財政投融資」「投資」「投機」「博打」「株式」「ジョン・メイナード・ケインズ」「交換」「貨幣」「カール・マルクス」です。



※この文章は、かつてのブログ記事に加筆したものです。https://puboo.jp/users/renhoshino77




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