うつせみのたわごと -4-

星野廉

2020/09/23 14:32

 そと。よそ。かかわりのない、ちのつながりのないものどものすむところ。よそは、うちにもいる。なかにもいる。よそをおう。だから、よそおう。これは、でまかせ。じびきにないものは、つくり、かたる。じびきは、ことばのあとをおう。ことばは、じびきにしたがわない。じびきは、おきてではない。はなつ、つくる、かたる、あやまる、なまる、まねる、まねそこなう、まなぶ、まなびそこなう。ことばは、そうしてうまれ、うつりかわってきた。よそとあう。よそとであう。だから、よそおう。これもでまかせ。ことばは、よそおう。これは、おそらく、まこと。


     *


 よそおう。ふりをする。かぶる。かわをかぶる。ばける。いのちをかけてまで、なにかのかわりをしようとするものもいる。とらのかわをかぶって、ばけるものもいる。とらのかわで、こしをおおうものもいる。とらをよそおう。とらにばける。えらそうにする。とら、とら、とら。でも、とらではない。かわりは、あくまでも、かわり。にせたもの。にせもの。ほんものにみえるものを、よそおう。そうみえるだけなのに。ほんものかどうかを、しるすべはないのに。だから、だれもがかたられる。だまされる。それでいて、さしてさしさわりがないから、よはつづく。


     *


 ほんものとみえるものは、かわりのもの。かりのもの。かりそめのさまを、ひさしいものとする。ものとする。そうきめる。みなで、そうだときめる。すると、そうだということになる。だから、にせる。にせようとつとめる。こうして、よは、にせものだらけとなる。にせものだらけと、かす。かす。かする。ばける。かりのすがたを、みあやまる。ほんものとみあやまる。さしてさしさわりはない。よはつづく。


     *


 あやまる。はずれる。ずれる。まちがえる。ごまかす。つくろう。それが、ひとのつね。さが。あやまっても、あやまらない。ずれても、とりつくろう。わすれる。なかったことにする。ぐあいのわるいことは、なかったことにする。そのうち、みんなわすれる。あやまらない。あやまらないはず。たがわないはず。そうおもいこむ。うたがわない。それが、ひとのつね。さが。このほしにすむ、ひととよばれる、はずれ、ずれた、いきするもののつね。さが。


     *


 さがしい。こざかしい。さがしても、このほしには、ほかにいそうもない。おのれのおこないを、はずべきものとおもう、さかしさがありながら。ふりかえることができるはずだ、とおもうこころがありながら。はずかしがるけはいがない。はずかしい。かしこまるそぶりもない。わるがしこい。



【追記 上記の戯言につづられていることばたちに身をまかせてください。どのようにも取れると思います。意味や解などありません。というか、無数にあるでしょう。そうやって、たわむれてみませんか。参考としての、ことわりをお望みの方は、グーグルで、 "うつせみのあなたに" "そと" "うち" 、 "うつせみのくら" "よそおう 、 "うつせみのあなたに" "にせもの"、 "うつせみのくら" "ずれる"、という具合にダブルやトリプルのキーワードで、4回検索してみてください。


 そのさいには、"○○" と括弧でくくるのをお忘れならないように、ご留意願います。今、挙げた4組のキーワードを、それぞれそのままコピーペーストして検索なさるのが、てっとり早いかもしれません。ヒットするのは、長い文章が多いと思います。関係ありそうなところだけ、拾い読みしていただくだけで十分です。こんな戯事にお付き合いくださる方がいらっしゃれば、うれしいです。】


【追記への追記 当ブログの左にある「メッセージを送る」機能をつうじて、ある読者の方からコメントをいただきました。追記にあるキーワードをつかってのグーグルの検索には、どういう意味があるのか。要約すると、そうしたご質問でした。メールアドレスが添えてなかったので、この場を借りてお答えします。目的は2つあります。


1)あやしげな記事の解説のため。いわば参考資料へのご案内です。


2)実は、「マラルメ」の「サイコロ」を「ふっている」のです。読者のみなさんと一緒に、ひらがなだらけのたわごとをめぐって、「詩作=思索=試作=失策=失錯=失作」ごっこができたらなあ。そんな思いで、検索エンジンという「賭博装置=スロットマシーン」の検索ボックスに、キーワードという「さい=コイン」を放り投げての、「サイコロあそび」をしているのです。「読む=詠む=与む=予む=余む=闇む」ことは、「書け=掛け=翔け=懸け=駆け=賭け」です。


 つまり、「どんな『さいの目=検索結果』が出るのかな」という、わくわく感を楽しんでいるのです。検索結果で出てきた言葉たちと、記事のたわごととの、目くばせや絡み合いや取っ組み合いやシカトのし合いがおもしろくて、はまっています。言葉って、けな気でかわいいです。いとしいです。


 万が一、この馬鹿馬鹿しいお遊びに関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら(「馬鹿馬鹿しいお遊び」とつづりながら、記事を書いている本人は、いたって本気なのですけど)、グーグルで、 "うつせみのくら" "マラルメ" "サイコロ" を、トリプルのキーワードとして検索してみてください。


 ヒットした検索結果の表示ウィンドウにざっと目を通すだけでも、「いったい、こいつは何をやっているか」の感じがつかめると思います。「とちくるっている」という感想をお持ちになれば、「大当たり」です(とはいうものの、本気なんです。正気だとは申し上げる勇気も根拠もありませんけど、本気です)。ご理解いただけましたでしょうか。】


【注: 現在は「うつせみのくら」という過去のブログ記事を再録したサイトがないので、上記の検索は意味をなしません。お詫び申し上げます。】


     ■


【解説】「こんなことを書きました(その20)」より

*「うつせみのたわごと -4-」2010-02-04 : 「外部・内部・辺境」という分類がテーマです。「よそおう」という言葉をつかって、そうした分類=分ける作業が、ありもしない物事を捏造することだと指摘しています。ヒトという生き物の性(さが)を嘆いています。この回で、ようやく、「追記」の意味を「種明かし=解説」しています。再読すると、ひとり相撲のわびしさを感じます。標準的な表記に直したキーワードは、「よそ」「装う」「そと」「うち」「ふち」「代わり」「偽物」「ずれる」「はずれる」「語る・騙る」「仮」「化ける」「誤る・謝る」「賢しい」「悪賢い」です。直接書かなかったキーワードは、「エルンスト・カッシーラー」「クロード・レヴィ=ストロース」です。



※この文章は、かつてのブログ記事に加筆したものです。https://puboo.jp/users/renhoshino77



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