夢は何でも肯定してくれます。
星野廉
2020/10/11 12:10
広辞苑で、大和言葉系の「うつつ・現」を引くと「ウツウツの約か」とのっけに記してあります。「約」というのは「約音(やくおん)」とも言うそうです。発音が変化するという意味で、一種の「訛り」だと勝手に理解しています。
「うつうつ」に会いに行ってみると、「うとうと。うつらうつら」という言葉が見えます。夢のなかで辞書を引いているような、よくわからない気持ちになります。
「うとうと」を訪ねて行くと「うつらうつら。とろとろ」と書いてあり、ますます、うとうとしそうになってきます。「うそうそ」の間違いじゃないのかとさえ、思えてきます。仕方なく、「うつらうつら」に行ってみたところ、「うとうと」がいました。
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眠くなり億劫(おっくう)になってきたので、「うつつ・現」にもどってみました。広辞苑を読んでいて、生きている状態、目が覚めている状態、気が確かな状態、という語義の次に、次のような記述に出合ってしまいました。
(4)(「夢うつつ」と続けていうところから誤り用いて)心がうつらうつらとして正気でないこと。夢心地。
これを読んで、「まぼろしのよ・幻の世」、つまり「夢の世」という言葉を思い出しました。
今度は「ゆめうつつ・夢現」を訪ねて行くと、「夢と現実」に続けて、「夢か現実か区別し難いこと。意識がぼんやりしている状態」とありました。広辞苑での旅はこんな感じでした。
辞書を引いたあとは、しばらく、ぼけーっとしていました。いい気持ちでした。
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眠るのが好きです。夢を見るのが好きです。いい夢、わるい夢、どちらも好きです。夢は何でも肯定してくれます。安心して任せられる世界です。
現実は苦手です。苦しいです。否定に満ちています。ままならない世界です。安心できません。でも、致し方ありません。(「げん・現 -1-」より)
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